Frigidus Symmetria
Solutio(解) Ⅰ：Frangensque Contentio(破砕の限界)
BGM: "キラキラ星変奏曲" by Mozart
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アクアは黒いボタンを押した。
何かが落ちるような変な音がした。
いつの間にか、背後にいたコルプスが沈んた声で言った。
「そのボタンは、改造して、予備の酸素ボンベを遺棄するものになってたんだ…」
呆然としたアクアの横から、コルプスが白いボタンを押した。
予備の酸素ボンベがなくなり、二人が、後30分吸えるほどの酸素しかなかった。
潜水艇が万全の状態で、緊急浮上しても、間に合う時間ではなかった。
それでも、アクアは必死に打開策を見出そうとしていた。
しかし、時間だけが過ぎ、息が苦しくなってきた。頭痛もする。
ふと視界が暗くなった。酸素不足で意識が薄れたのかもしれない。
暗闇が晴れると、星空が広がっていた。
コルプスの声が聞こえた。
「推進装置が故障しているから、浮上するには、大量の質量を捨てる必要があるよ。
もし浮上できても、ゆっくりとした速度でしか上がれないから、どうにか酸素を節約しても生還は不可能なんだ…」
声のする方を見ると、コルプスが仰向けになって、星を眺めていた。
近くに簡易プラネタリウムがあり、そこから星を映し出していたのだった。
「だから…星でも見よう…」
コルプスは、いつもの様にそう言った。
「あなたの行動は最後まで予想外ですね」
アクアはそう言って、コルプスの隣で星を眺め始めた。
夜遅くまで星を見て眠くなったように、意識が朦朧としていった。
消えゆく意識の中、星空とあなたの手の感触だけはいつまでも確かだった。
後日、海底にて、アクアとコルプスの遺体が発見された。
圧力に潰された無残な姿だったが、固く握られた手に残された思いだけは、どんな重圧すらも潰す事は出来なかった。
Solutio(解) Ⅰ：Frangensque Contentio(破砕の限界)
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